にもかかわらず、規制委は大規模商業用発電原子炉と同じ基準をこの研究用小規模炉に当てはめる。地震、津波、竜巻、テロ、航空機、火災、活断層など全てを網羅した厳しい対処と、数万から40万ページ(九州電力の川内原発)にも上る膨大な量の書類作成を求める。
京大の宇根崎氏ら教授・研究者は過去2年間、規制委対応に追われ、書類作りがメーンの仕事となり、本来の研究の遅延遅滞が続いている。
なぜこんなことになるのか。規制委の役割は、現場を一番よく知っている事業者と対話し、原発および原子力利用施設の安全性を高め命を守ることだ。だが、強大な権限を与えられた3条機関としての独立性を、事業者とは意見交換しないとでも言うかのような孤立と混同しているのではないか。規制委は現場の実情を無視した見当外れの審査に走り、人命を脅かす結果を招いているのである。
原子炉施設の安全確保が万人共有の目標であるのは論をまたない。しかし現場に十分耳を傾けない規制委は非現実的なまでに厳しい要求をするだけでなく、具体策になればなるほど彼らの基準は揺らぐのである。