iPS細胞講演詳報

「リスクゼロは不可能」「再生医療は人間を幸せにするのか」第一人者・高橋政代氏の情熱と苦悩

ストック細胞を利用

 《今後、患者自身から作るiPS細胞ではなく、京都大が進めている「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」で備蓄している拒絶反応が少ないタイプの特別なiPS細胞を使うことで、コストを抑えたいという》

 患者さん1人1人からiPS細胞を作るより、ストックの細胞を利用したほうが効率が良く、たくさんの患者さんに対応できる。その方が、早く標準的な治療にできる。

 なぜ、そんなに急ぐのかと聞かれたことがある。驚いた。どんな気持ちで患者さんが治療を待っているのか、ご存じないようだったので。「リスクをゼロにせよ」という声もあるが、臨床には必ずリスクがある。残念ながら検査で亡くなる方もいるし、薬には必ず副作用がある。白内障の手術で失明してしまうこともある。効果とリスクについて、みんなでちゃんと考えてほしい。

 《眼球内で光を感じ取る視細胞の再生医療でも5年以内に臨床段階に入りたいという》

 まだ現在は、コストが非常に大きいことに比べ、治療効果が小さい。このギャップを埋めなければならない。再生医療は人間を幸せにするのか。1例目の患者さんには、すごく喜んでもらった。しかし、過剰な期待はいけない。再生医療といっても元通りになるわけではない。残酷な希望にならないよう、伝え方に気をつけたい。

「世界中の企業が日本に注目」

 《平成26年11月に施行された医薬品医療機器法(改正薬事法)にも言及する。これまで新薬開発などには安全性と効果を検証する治験に膨大な費用と長い時間がかかったが、新制度ではiPS細胞による再生医療製品などについて安全性が確認できれば期限つきで承認を得ることができるようになる》