さらに今回の契約相手がBAEだった点も大きい。KF-16は米国LM社製なのだから、アップグレードも同社に頼めば最もスムーズにいく。それを入札で排し、目先の低価格につられてBAEと契約したことが、結果的にコストアップにつながったとも指摘される。
異なる会社が異なる設計思想で作り上げた機器をリンクさせるのはソフト、ハードともに困難が伴う。両社間で互いに情報をやりとりする必用があるが、ライバルの軍事企業同士が企業秘密を打ち明け合うというのは無理な相談だろう。アップグレード作業の遅延が懸念されるのも無理はない。安くあげるため入札などという小細工を弄したことによる大失敗である。
F-16は世界28カ国で4500機以上売れたベストセラー戦闘機で、多くの保有国はLMによる純正のアップグレードを希望、BAEは改造商戦で苦戦している。そのBAEが韓国へのバーゲンセールで実績を作りたかっただろうことは想像に難くないが、訴訟を起こさざるを得なかったBAEも、思惑が外れたといえそうだ。
韓国は結局、米国にFMSの契約破棄を申し入れ、米側は11月5日、正式にフェイズ1契約解除を発表。計画は振り出しに戻った。韓国国防部は「これで新たな契約をLM社と結ぶ道が開けた」とするが、BAEと訴訟沙汰になった今、唯一の選択肢であるLM社の言い値をのむしかないとの見方もある。
韓国では14年12月、次世代戦闘機KF-Xの開発費552億ウォンが15年度国防予算に盛り込まれた。KF-XはKF-16の後継機種で、輸出も視野に入れているという。アップグレードどころか修理も自国内で困難だというのに、最新鋭戦闘機を設計・製造しようという計画を、LM社やBAEはどう見ているのだろうか。(2015年1月6日掲載)
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