この有害説の発端は、平成17年に出版されミリオンセラーとなった本「病気にならない生き方」(サンマーク出版)とされる。著者は外科医の新谷弘実氏(80)で、自身の紹介サイトなどによると「胃腸内視鏡学のパイオニアとして活躍。ハリウッドセレブやレーガン元大統領、世界的トップ企業の専任医師として世界各国のVIPから信頼されている外科医」だそうだ。
同書では、牛乳のカルシウムはかえって体内のカルシウム量を減らしてしまう▽牛乳を飲み過ぎると骨粗鬆症になる▽牛乳を毎日たくさん飲んでいる米国、スウェーデンなど世界4大酪農国は股関節骨折と骨粗鬆症が多い▽日本でアトピーや花粉症の患者が急増した第一の原因は学校給食の牛乳にある-などの記述があり、松嶋さんの言い分がこの本の影響である可能性がうかがえる。
科学といえない独自理論
これらの記述は科学的に正しいといえるのだろうか。
医学や栄養学などの学識者らで構成する「牛乳乳製品健康科学会議」(会長=折茂肇・骨粗鬆症財団理事長)は、新谷氏の主張にはいずれも科学的根拠がないとして、同書が出版された2年後の平成19年3月、有害説を信じる人たちが増えてきたのを受ける形で、新谷氏に公開質問状を出している。