具体的には、平等院で国宝・鳳凰堂内にある復元模写された扉絵「九品来迎図(くほんらいごうず)」に顔料が剥がれ落ちるなどの影響が確認された。平等院によると、過去に合成樹脂を使って剥落止めの修復が行われた箇所とみられる。別の壁画でもすでに確認されている。また、国指定の重要文化財・西国寺金堂(広島県)では「来迎壁画」の表面に、過去の修復で使われた合成樹脂が浮き出し、墨で描かれた線や色彩が見えなくなる状態に劣化した。
平等院の扉絵と西国寺の壁画はすでに措置が取られて修復されたが、影響は各地の文化財で相次いでおり、文化庁によると、把握できた分だけでも数十件に上るが、使用件数が千件以上になることからさらに拡大する恐れがある。
文化庁は、古来行われていた自然素材を使った修復の方法に切り替えを進めていく方針。ただ、自然素材は合成樹脂に比べ接着力が弱いことから、新たな素材の開発も含め検討する。