その他の写真を見る (1/3枚)
世界遺産・平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の扉絵をはじめ、全国の文化財で、昭和20年代以降に修復作業で接着剤として使われた合成樹脂が原因とみられる劣化や剥落が相次ぎ、文化庁はこの修復方法を見直す方針であることが31日、分かった。世界遺産の原爆ドーム(広島市)なども影響を受けるなど、国宝級の文化財や世界的な建築物に広がる可能性があり、これらの保存が危機にさらされている現状も浮き彫りになった。
被害件数は少なくとも数十件あり、同庁は今後の修復でこの樹脂の使用を控え、古来の自然素材を用いた手法に切り替える方針。
文化庁によると、合成樹脂は接着力が強い上に扱いやすいとされ、20年代から壁画の剥落止めなどの文化財修復での使用が始まり、40年代には広く使われるようになった。これまでに全国の文化財千件以上で使用されているという。
ただ、紫外線に弱く、時間がたつと粉状になったり、表面上に樹脂がにじみ出て接着面が剥離し、顔料などの剥落につながるといい、こうした影響は平成10年ごろから確認。東京文化財研究所の資料によると、瑞巌寺(宮城県)の襖(ふすま)絵や中尊寺(岩手県)のほか、知恩院経蔵(京都府)、唐招提寺金堂(奈良県)、法隆寺(同)などで剥落止めが行われた。