他人の学術書の表紙をすげ替え、自著として出版するのに関与した教授179人が韓国で摘発される事件があった。大学の有名、無名にかかわらず、1980年代から黙認されてきたとされ、今回の摘発は「氷山の一角」といわれる。数字偏重と著作権無視が横行する韓国のアカデミズムの悪弊が根底にあるとみられ、一朝一夕の改善を期待するのは難しそうだ。(桜井紀雄)
“あきれたリサイクル”の裏に利害の一致
韓国メディアの報道によると、今回、摘発の対象となったのは、全て理工系の学術書で、計38冊。
手口としては、他人の書籍の表紙の著者名を自分の名前に替えたり、共著者として加えたりしていた。本の体裁や、タイトルの1、2文字を変えるケースもあったというが、文書の内容はそのままに再出版されていた。
犯罪には、大きく分けて3者が関わっていた。
まず、研究実績を水増しするため、表紙に自分の名前を記して盗作していた教授。次に「人気のない理工系書籍」を再出版して在庫の処分を望んだ出版社。
加えて、盗作されるはずの原著者も、共著者として自分の名前が残れば、再出版で印税が入るうえ、盗作する側の同僚教授や出版社との関係を考え、黙認していたという。
「3者の利害が一致」(検察当局)し、誰も被害者として名乗り出ないあきれたリサイクルが続けられてきたのだ。