回顧2015文化

(8)考古学 イスラム国、シリアの神殿破壊 舒明天皇の幻の古墳?

 5月には、淡路島の南あわじ市の砂山から銅鐸7個が出土。これほどまとまって見つかる例は珍しく、内部には「舌(ぜつ)」という銅鐸を鳴らす棒も残っていた。銅鐸は五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る祭器ともいわれるが、淡路島は交通の要衝に位置することから、航海の安全のためとの見方も。淡路島は、古事記の国生み神話では最初に誕生した島とされ、古代から神聖な場所だったことが浮かび上がった。

 11月には、奈良市の東大寺の調査で、東塔が鎌倉時代の再建時に拡張されていたことが判明。京都市の平安京跡では、平安時代前期(9世紀後半)の木簡が出土し、古今和歌集の「難波津(なにわづ)の歌」が仮名で記され、ひらがなのルーツを探る資料になった。

 訃報も相次いだ。1月、お茶の間考古学の草分け的存在として親しまれ、銅鐸の謎や邪馬台国論争などを分かりやすく解説した奈良大名誉教授の水野正好さんが80歳で、4月にはシルクロード研究などで知られる樋口さんも95歳で亡くなった。

 樋口さんが晩年、ライフワークとしたのが、シリアの隊商都市・パルミラ遺跡。1990年から、当時所長を務めていた橿原考古学研究所などが2世紀ごろの地下墓を調査し、被葬者の彫像をはめ込んだ墓室などを発掘した。遺跡保存や整備を進めていたなか、シリアが内戦状態になり、今年5月にはISが侵攻。同遺跡のベル神殿などが破壊された。

 文化財が危機的状況にあるなか、12月には遺跡の重要性などを訴える国際会議がシリアの隣国、レバノンで開かれた。パルミラ遺跡を20年以上調査してきた橿原考古学研究所の西藤清秀技術アドバイザーが呼びかけて実現。欧州など13カ国150人以上が参加した。

 西藤さんは「シリアの研究者が『われわれのことを忘れないでほしい』と強く訴えていた。現地に入れなくても、さまざまな支援を継続することが大切」と力を込めた。=おわり

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