喫茶店を出て、再び中央通りに向かうと、黒山の人だかりができていた。急いで行ってみると、そこには小さなカバン屋があった。銀座6丁目の「ユニクロ銀座店」の数軒並びだ。歩道を歩くこともままらず、遠くからしばらく店の様子を見ていた。
店頭のショーケースには「全商品¥5400」と表示されたボードが貼られていた。中国人でごったがえす店の中に入ってみると、彼らのお目当ては大型のスーツケースであることがわかった。ハンドバッグやビジネスバッグなどもあるが、手に取る人は皆無だ。彼らが目指すのはあくまでスーツケースで、多くがレジ待ちで列を作っていた。
スーツケースは日本円で5400円とは思えないほどの出来で、日本人が購入しないのか不思議なぐらいだ。購入者の後を付けると、購入したスーツケースを持って外に出たとたん、歩道にしゃがみこみ、スーツケースを開けた。何をするのかしばらく見ていると、手に持っていた紙袋を詰め始めた。