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当時は正式な裁判に入る前に、裁判をするかどうかも含めて判断するための予審制度があり、そこで証拠の収集や保全なども行われた。
《予審の決定書(要旨、抜粋)》
うまく野口家に入った男三郎だが、義兄で漢詩人の野口寧斎はこれを信用しない。男三郎もこれを察したばかりでなく、寧斎の病気(ハンセン病)が感染する危険を恐れていたが、そゑへの気持ちは強く、野口家と離れたくない。寧斎の病状はまったく良くならないが、男三郎はこの治療や感染防止に役立って恩を着せ、自らの利益とするしかない。看護を一生懸命にすれば寧斎もこれを喜び、ときには漢詩をつけて謝意を示したこともあった。
ハンセン病に人肉の特効
かねてから野口は人肉が寧斎の病気に特効があるということを聞いていたが、35年3月上旬には本でも読んでその俗説への妄信を強め、近所の児童を殺害してその肉片を手に入れようと様子をうかがっていた。
同月27日、いよいよそのチャンスが来た。夜中に近所の河合荘亮(11)が一人で道を歩いているではないか。砂糖を購入した帰りを捕まえて鼻と口を押さえて窒息死させ、用意していた小刀で左右の臀部から肉を摘出し、ひそかに肉塊を自宅に持ち帰った。