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明治35年3月27日の夜10時ごろのこと。東京市麹町区下二番町(現在の東京都千代田区二番町)の道路で、左右の臀部の肉を直径3、4寸(9~12センチ)ずつそぎ取られた少年の遺体が発見されるという前代未聞の事件が起きた。被害者は同町、中島新吾の長男、河合荘亮(11)。少年の臀肉をそぎ取る猟奇的犯行は市民を震撼させた。
入浴の帰り
荘亮はその日、試験休みで朝から自宅にいた。妹シゲと母キクの内職を手伝い、夕食後の午後8時、妹と一緒に母に連れられて近所の湯屋に行き入浴。同9時ごろに風呂を上がり、帰宅する途中、母から玉砂糖を1銭5厘分買ってきてくれと2銭銅貨を渡され、その足で麹町6丁目の砂糖問屋「遠州屋」へ向かった。
さて、父・新吾はこの日も早朝から秀英舎(現・大日本印刷)に出勤し、帰宅の途についたのは午後9時ごろ。麹町の大通りから7丁目の角を曲がった先の金貨業、安東庄次郎方の窓下付近の路上で、細面でやせ形、ねずみ色の二重回し(インバネスコート)を着た男が、路上に伏した少年の上にかぶさっているのを目撃。しかし、薄暗いので子細は分からず、転んだのだろうぐらいに思い、気にも掛けずそのまま通り過ぎた。