正論

情報収集能力と発信力を強化し、新たな勢力均衡の時代に備えよ 三浦瑠麗

 《東アジアに波及する秩序の変化》

 かつて日本は、勢力均衡の時代を生き抜くことに失敗している。情報収集能力、想像力、発信力は日本外交が今なお抱える課題でもある。国内に大きなムスリム社会を抱えていない日本は、中東での混乱に関して二次的な存在だ。だが、東アジアの問題に関しては当事者である。

 中東の混乱が長引くほど各国は東アジアへの関心を低下させ、そこに割く資源を減らさざるを得ない。9・11テロ後の10年間に最も大きく変化したのは、米国が国力を低下させ、中国が超大国として台頭したことだった。イラク戦争の敗者はサダム・フセインだが、同時に傷を負った米国でもあったとすると、戦略的な勝者は誰だったのかという重要な問いが残る。

 南シナ海問題に象徴される対立構造も重要な局面を迎えつつある。米国が中東の泥沼に足をとられて、戦略的な優先順位を見間違えないようにすることは同盟国である日本の重要な役割だ。中東の混乱は、国際秩序の変化という形で東アジアに波及する。東アジアにも勢力均衡が出現することを想定しつつ、世界と向き合う時代がやってくる。(国際政治学者・三浦瑠麗 みうら るり)

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