正論

情報収集能力と発信力を強化し、新たな勢力均衡の時代に備えよ 三浦瑠麗

 シリア問題においては、イランやトルコやサウジアラビアなど地域大国がそれなりに納得し、支えるだけの意思を持つ解決策が必要だ。残酷な言い方だが、諸勢力が戦いに疲れて妥協するまでは平和が訪れることはないだろう。

 主要国が多極化する勢力均衡の世界では、まず力の論理に基づく現実があって、それに後付けで理屈がつけられていく。シリアで対立する諸勢力の代表を欧州に呼び、和平交渉が行われる様は、第一次大戦後に今日の中東を形成したプロセスを彷彿させる。現場でただ殺し合いを続けるよりは「まし」なのだが、目の前の平和のためには将来に残りそうな禍根をもあらかじめ受け入れる必要がある。プーチン露大統領は権益保持のために、おそらくアサド大統領の首だけ挿げ替えたアサド一派の独裁政権をシリアの一部に維持するだろう。それは、当初から不完全さを前提とした世界である。

 勢力均衡の世界を生き抜くには、対立するさまざまな利害関係者間の情報戦において優位に立ち、相手の立場から世界がどのように見えているかを見極める想像力が必要だ。力による妥協を覆い隠し、それなりの「原則」として打ち出す発信力も必要になる。

会員限定記事会員サービス詳細