正論

情報収集能力と発信力を強化し、新たな勢力均衡の時代に備えよ 三浦瑠麗

 むき出しの暴力を前にしては気の遠くなるような話だが、国際社会に求められているのはISと一線を画す交渉可能な当事者を特定し、停戦合意を模索し、諸勢力が宗教的寛容を受け入れることである。その先には新たな悲劇を生み出さないための難民への支援があり、経済を再興するための息の長い関与と援助が必要である。教育を通じて多様性を育み、無知と憎しみの連鎖を断ち切ることだ。

 しかし、自国民がテロの犠牲にあっているときに、民主国家が、そうした長期的な政治的意思を持続させることは難しいだろう。現に、各国では難民政策や移民政策への不満が高まり、ムスリム全般への風当たりも強まっている。

 では今後、現実に何が起きるかといえば、米国主導の国際秩序から部分的に一九世紀型の勢力均衡の形へと戻っていくということである。

 《「アメリカの平和」の終わり》

 もはや米欧露などの大国が特定のイデオロギーに基づいて世界を書き換えられる時代ではない。しかも、第二次大戦後の主要な国際問題において、初めて米国が問題解決の矢面に立つことを拒否している。オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と宣言したことが象徴的に物語っている。問題を抱えつつ曲がりなりにも存在してきた「アメリカの平和」の時代が終わろうとしている。

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