検証・ワタミ過労自殺和解(上)

新入社員全員に残業代返還「渡辺本」購入代も…実質勝訴と呼べるこれだけの理由

 全員参加が命じられた障害者施設でのボランティア研修も、休日扱いだった。

 こうした研修や課題提出について、ワタミ側は当初、美菜さんの両親に対し、業務とは異なる自己啓発だと説明していた。あたかも美菜さんが自主的に取り組んだことで、会社が強制したのではないと暗に主張したのだ。

 だが、そんな強弁はさすがに無理があった。

 人事部が作成した内部資料によると、課題図書となった渡辺氏の著書の購入代金は、ワタミがいったん立て替えた上で、給与から控除すると明記されていた。美菜さんを含む新入社員全員に、強制的に買わせていたというわけだ。

 美菜さんが提出したリポートは11通残っており、そのうちの1通にはこんなくだりがある。

 「どこのお店も、こんなにドタバタしているものだろうか? 営業は、こんなにギリギリなのだろうか? こんなに人は、疲れているものだろうか? 分からない。ワタミ文化とは、こういう現実をさすものだろうか? 120%の力で、どんなにひどい状況でも無理やりにでも乗り越えろと?」

 行間を読まずとも美菜さんのSOSはくみ取れたはずだが、リポートの提出を受けたワタミの社員は、誰ひとりとして美菜さんを救う対策を講じなかった。「理念集」や課題図書に基づく自己啓発は、無力どころか美菜さんを追い込んだだけだったのだ。

ワタミの追加負担額は4400万円以上

 「理念集」には、「365日24時間死ぬまで働け」という表現もあったが、ワタミは26年5月、遺族の心情を察した結果として、この文言を削除したと発表している。

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