検証・ワタミ過労自殺和解(上)

新入社員全員に残業代返還「渡辺本」購入代も…実質勝訴と呼べるこれだけの理由

 弁護団によると、美菜さんのケースだと慰謝料は通常2千万円程度が相場とされるが、今回は2倍に当たる4千万円となった。上積みされた2千万円が懲罰的な意味合いだという。

 ワタミ側は当初、請求棄却を求めて争った。26年3月の第1回口頭弁論には創業者で当時社長だった渡辺美樹参院議員(56)も出廷。「道義的責任を重く受け止める」と述べる一方、「法的責任の見解相違については司法の判断を仰ぐ」として、徹底抗戦の構えを見せていた。

 それが、今回の和解条項では、渡辺氏が経営理念を作り従業員に過重な業務を強いたことなどを理由に、被告となったワタミなど法人2社、個人3人の中でも「最も重大な損害賠償責任を負う」とされた。

 渡辺氏は自身のフェイスブックで「ご両親を傷つけたこれまでの態度、認識、発言は全て取り消す」とコメント。「急速な拡大成長の過程で起きた今回の事実は取り返しがつかず、私の人生最大の反省点」と態度を一変させた。

「理念集」の暗記を“自己啓発”と主張

 「体が痛いです。体が辛(つら)いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」。美菜さんが手帳にこう書き残すほど追い込まれたワタミの「働かせ方」は、どれほど過酷だったのか。

 仕事が終わるのは終電の後。タクシーは使わせてもらえず、始発電車まで店内で過ごした。休日も渡辺氏の著書を課題にしたリポートの作成に追われ、深夜勤務を終えた翌日の早朝研修では、渡辺氏のメッセージをまとめた240ページ以上に及ぶ「理念集」の暗記テストを課された。満点を取らなければ次回の研修で追試が待っていたという。

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