年の瀬 記者ノート

青森発 県産特A米「青天の霹靂」 「冷めてもおいしい」消費者驚き

 日本穀物検定協会の食味ランキングで、青森県産米初の最高評価「特A」を獲得した「青天の霹靂(へきれき)」が今秋デビューした。全国有数のコメ産地の東北で唯一、特A米がなく後塵(こうじん)を拝してきた青森県のコメ農家、消費者にとってまさに大願成就だ。ネーミングの斬新さも加わって、取材先でもこの話題で持ちきりで、さながら青天の霹靂フィーバーといったところ。米価の下落や消費者のコメ離れなど、農業を取り巻く環境が厳しさを増す中にあって久々に明るいニュースとなった。

 ◆10年の歳月かけて

 デビュー当日の10月10日。青森市内のスーパーで買い求めていた主婦(51)は「すごく期待しています」と2キロを購入。仙台市から実家に帰省していた別の主婦(49)も「宮城にはササニシキがありますが、青森で初の特A米ということで食べ比べてみます」と笑顔で話していた。「待ってました」とばかりに、この日の県内各地のスーパーなどではどこも飛ぶような売れ行き。まさに鮮烈デビューの様相だ。

 「どれどれ」。人気に乗り遅れまいと、さっそくわが家でも食してみた。古女房いわく「粒が大きく食感もいい。冷めてもおいしい」。巷で取材してみると、異口同音に同じような答えが返ってきた。まさにその名の通り、驚きのうまさが消費者を席巻した。

 青森県のコメ作りは、これまで高い収量をメーンにしてきたため、食味などで他県産米との産地間競争に後れを取ってきた。農業関係者などから食味で勝る新品種に期待が高まり、県産業技術センターが約10年の歳月をかけて開発を進めた。

 2月19日午後、県庁に県東京事務所から特A取得の連絡が入ると、待機していた三村申吾知事は農林水産部の職員とガッチリと握手を交わし、「生産者、農業関係団体の努力のたまもの。ありがとう」と時折、言葉を詰まらせながら喜びを語った。感情を表に出すタイプの三村知事だけに、青天の霹靂に懸けた思いがよぎったのだろうか、全身から喜びがほとばしっていたのが印象的だった。

 ◆徹底した品質管理

 県は青天の霹靂を県産米のエースとしてブランド力を高めるため、徹底した品質管理を行った。作付け地域をコメ作りに適しているとされる津軽地方の12市町村、今年産の作付面積を約550ヘクタールと限定。平均収量は10アール当たり8・8俵(530キロ)と、これまでの多収生産とは一線を画す。早くから特A米の取得に向けた取り組みを進めてきた平川市の工藤憲男さん(63)の「収量を上げようとして欲張るとブランド米としての価値がなくなる」との言葉に、少量でも付加価値の高いコメ作りの重要性を垣間見た。

 来年産は、今年の試験栽培で作柄や品質をクリアした弘前市岩木地区と大鰐町の一部地域が新たに加わり、同地方の13市町村で作付けされることになった。

 青天の霹靂協奏曲に沸いた1年だが、一過性のブームに終わらせないためにも来年以降が本当の勝負。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意でコメ農家への影響が危惧される中、産地間競争に打ち勝つためにも他のブランド米との差別化を図り、販路開拓が鍵を握る。三村知事も「TPPで少なからず影響がある。だからこそ特A米で打ち勝っていく」と力を込める。ブランド米の新参者の強みを生かした大胆かつ緻密な販売戦略が重要だ。特Aを維持するための徹底した品質管理は言うまでもない。

 「青森県はリンゴだけじゃない。全国に誇れるコメもある」。関係者任せではなく、一人一人が生産者の労苦に寄り添い、機会あるごとにPRすることが何よりも消費拡大につながると確信している。(福田徳行)

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 東北各県で取材活動に携わる記者たちが、この1年を振り返ります。

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