政府は、来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年東京五輪・パラリンピックに向け、テロ対策を加速させている。パリ同時多発テロのような直接の殺傷行為を伴う犯罪に目が向きがちだが、それと同等の脅威となるのがサイバー攻撃によるテロだ。サイバー攻撃はインターネットを悪用して人的、物理的な被害を引き起こすまで技術が進化しており、深刻なテロ被害を生みかねない。(千葉倫之)
「SF小説のようなことが現実になりつつある」
そう語る政府関係者は、今年7月に米雑誌「WIRED(ワイアード)」がネット上に動画付きで公開した、ある「実験」を例に挙げる。
その動画には、ハイウェイを快調に走る車が映し出される。だが、突然、クラクションが勝手に鳴り、ワイパーが作動。空調も「オン」になり、カーラジオからも爆音が流れ始める。運転する雑誌記者はパネルを操作するが、意図しない動作を止められない。とうとうエンジンが止まり、なすすべなく車は減速するだけだった-。