政府は農業法人化を推進することなどで大規模化を図ってきたが、思惑通りに広がったわけでない。次なる対策として、耕作放棄地の固定資産税を1・8倍に上げる一方、農地中間管理機構(農地バンク)に貸し出した場合には軽減する考えだが、どこまで集約化できるかは未知数だ。
すべての職種で後継者の奪い合いが予想される中、若者を呼び込もうと思えば、農業をビジネスとして成り立たせるしかない。そのためには農業という仕事のイメージをがらりと変えることである。
例えば、「スマート農業」の普及だ。情報通信技術(ICT)やロボットなど高度な技術によって生産コストを下げ、人手不足を補うのである。これには大規模な投資や技術者の確保といった新たな問題が生じるが、大企業などから資本を呼び込み会社化を図ればクリアできるだろう。
農業会社では、大々的に「野菜工場」を展開したらどうか。天候の影響を受けにくく、安定した収益が期待できる。農家を悩ましてきた雑草取りなどの手間も省ける。
農業会社のメーンの仕事が商品開発や品質管理となれば、体力的に農地を耕すことに抵抗のある若者や、土まみれになるのは嫌だと考える若い女性の就職も増えよう。サラリーマンとして収入が安定すれば、大都市部からの志望者も増えるかもしれない。
「野菜工場」まで本格的でなくとも、従来の大地を耕す農業についてもハイテク化を進めることだ。収穫や肥料やりを自動で行うロボットの開発は進んでいる。田んぼにセンサーを取り付け、水温データなどを毎日把握して稲にとって一番適した環境を整える取り組みも始まっている。