「安価な農産物が流入すれば、日本の農業は大打撃を受ける」。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐる農業関係者の懸念に対し、政府は対策に追われている。
だが、日本農業を取り巻く厳しさは国際競争力だけでない。農業をする人の減少のほうが深刻かもしれない。耕す人がいなくなれば、競争や対策どころではなくなる。
農林水産省が11月末に発表した「2015年農林業センサス」(概数値)によれば、農業就業人口は過去最少の209万人(2月1日現在)に落ち込んだ。5年前の前回調査に比べ51万6000人、率にして2割の減少である。
平均年齢は0・5歳上昇し66・3歳となった。高齢で農業をやめる人が増える一方、若者の農業離れが進んだということだ。結果として、1年以上作付けしていない「耕作放棄地」も2・8万ヘクタール増え、富山県とほぼ同じ42・4万ヘクタールとなった。
農業の衰退は多くの地域の消滅につながる。それどころか安全保障にも直結する。世界人口は激増しており、食料をいつまでも安定的に輸入できるとはかぎらないからだ。食料確保は今後、各国政府にとって大きな政治課題となるだろう。
「スマート農業」がカギ
農業就業人口の減少を食い止めるには何をすべきなのか。戸別所得補償のような農家への支援では根本解決とはならない。多少の補助金では焼け石に水だ。日本全体で若い世代が減る。どの職種も後継者不足になるということである。多くの農家は家族経営であり、後継者となり得る若者の確保はより難しい。