戦後70年の今年は歴史と向き合う硬派な舞台が目立った。戦中派が渾身(こんしん)の思いで筆をふるった戯曲を再演する動きも続いた。(飯塚友子)
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新作では、手塚治虫の原作を舞台化した神奈川芸術劇場の「アドルフに告ぐ」(木内宏昌脚本、栗山民也演出)が、人間が戦争で変化してしまう怖さを描き、鮮烈な印象を残した。だが、激戦地にあって表現せずにはいられないのも、また人間。ニューギニアで奇跡のように生まれた芝居小屋の実話を舞台化した、前進座の「南の島に雪が降る」(瀬戸口郁脚本、西川信廣演出)もさわやかな感動を呼んだ。
若手では、日本人検事を通し、敗戦後の朝鮮半島の現実を語る劇団チョコレートケーキの「追憶のアリラン」(古川健作、日澤雄介演出)が骨太の新作。再演作だが、沖縄戦を女学生の視点で描いたマームとジプシーの「cocoon」(藤田貴大作・演出)、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の評伝を軸に、小さな研究所にまで影を落とした戦争を表現した、てがみ座の「地を渡る舟」(長田(おさだ)育恵作、扇田拓也演出)も充実した舞台だった。