模型で「理想のまち」づくり 被災小学生ら特別授業、未来の荒井地区に挑戦 宮城

 東日本大震災で被災した小学生らが理想のまちづくりを考える特別授業が17日、仙台市若林区の市立七郷(しちごう)小学校で行われた。児童らは津波で甚大な被害を受けた同区の荒井地区で、防災や自然環境などを考慮しながら街の模型を作った。今月の市地下鉄東西線の開業で沿線開発が盛り上がる同地区。子供たちは来年2月、完成した模型を使って「未来の荒井」像を保護者や地区の住民らに発表する計画だ。(岡田美月)

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 特別授業は、児童たちが将来の街に愛着や希望を持つ機会を作りたいと、同校が日本ユニセフ協会や荒井地区の土地区画整理組合などの協力を得て実現した。平成24年4月に始まり、毎年、同校6年生がこの授業に取り組んでいる。

 今年参加したのは6年の男女169人。児童のほとんどが震災当時は同校の1年生で、4階建ての校舎内で激しい揺れに襲われた。沿岸部にあり壊滅的な被害を受けた同区の荒浜地区から来た2千人超の避難者受け入れのため、別の小学校に避難した児童もいたという。

 児童らは授業が始まると、防災センターや高台、地下鉄東西線の車両などに見立てたブロックに絵の具などで色付けし、机上に置いた板の上に配置した。6年生は今年4月以降、授業の一環で同校近くの仮設住宅や神社などを回り、住民に話を聞いたり、写真を撮ったりして、地元の現状や魅力を知る活動をしてきた。

 震災当時、同市泉区の祖母宅に避難したという早坂旭陽(あさひ)君(12)は「車いすやつえを使う人にも入りやすいように、防災センターにはスロープを取り付けます」と説明。東西線荒井駅を町のシンボルにしたいと考える菅原京大(けいた)君(12)は「10年後、駅が街のシンボルになれば、お客さんも増えて発展していける」と声を弾ませた。

 都市計画が専門で、講師を務めた山形大学の佐藤慎也教授は「まちづくりを考えた小学校時代の経験が(街の)将来の発展につながる。アイデアの中には『七郷大学』というものもあった。学生のほとんどが首都圏に集中する時代に、(若者が)地元で高い専門性を身に付け、地域で育っていく環境ができればと思う」と期待を込めた。

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