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三菱鉛筆の油性ボールペン「ジェットストリーム」が快進撃を続けている。なめらかな書き味が消費者に支持され、世界60カ国で年間1億本を販売。近年は高級版も加え、プチぜいたく需要も巧みに取り込んでいる。大ヒットを呼び込んだのは、油性ペン嫌いを自認する、ある開発者の不満だった。
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ジェットストリームは国内外で高い人気を誇り、特に文字の画数が多い漢字文化圏には熱烈なファンが存在する。その開発がスタートしたのは平成12年。横浜研究開発センターの開発者だった市川秀寿氏が、油性ペンの担当に着任したのが始まりだった。
「書いた後もインクが乾かず手が汚れやすい」「書くのに力が要る」
油性ペンは筆跡がにじみにくいなどの点で優れる半面、インクの性質上、こうした欠点がつきまとう。力を入れずに書ける水性ペンを好んでいた市川氏は、自力で欠点を解消しようと思い立った。
担当になって日が浅く、油性の知識は皆無。手探り状態で50~60種類の溶剤を試し、何とかこれはというものにたどり着いた。「当時はどの会社も同じ溶剤を使っていた。『それをやめればいい』と簡単に考えたのがかえって良かった」と振り返る。