話題の肝

夏目漱石は本当に「I LOVE YOU」を「月がきれいですね」と翻訳したのか? TVドラマが続々と引用…

 一方、注意したいのは、漱石の逸話自体が「事実」として裏付けの取れているものではないということだ。昭和53年に刊行された小田島雄志氏の著書「珈琲店のシェイクスピア」では、つかこうへい氏が「有名な話」として紹介。英語教師をしていた夏目漱石が「I LOVE YOU」の訳し方を生徒に尋ね、「愛している」と直訳した生徒を一喝。「『月がとっても青いから』と訳すんだ」と諭す-という内容だ。ただ、出典は明らかにされておらず、真偽のほどは不明確だ。

 「都市伝説」が「事実」のように一人歩きするのは考えものだが、愛情を月の美しさで表現したこの逸話が、ロマンチックなのは確かだろう。和歌を引くまでもなく、古くから情景描写に思いを託してきた日本人の感性とも合っているからこそ、これだけドラマにも採用されているのかもしれない。ただ、ここまで続くと、さすがに食傷気味ではあるが…。(三品貴志)