児童養護施設に入所する高校生が自動車運転免許を取得する際の費用を支援しようと、県は県指定自動車教習所協会と協定を結び、1人当たり5万円を限度に支援する制度を創設した。国、県の補助を併用すると最大自己負担なしで免許を取得できる。協会による補助は全国でも初めての取り組みといい、県の担当者は「免許取得の支援を通して生徒らの自立を手助けできれば」と話している。(川峯千尋)
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県こども安全課によると、対象は今年度末に高校(通信制、定時制含む)卒業予定で、県内の児童養護施設に入所しているかファミリーホームや里親の下で生活している生徒ら。同協会には県下48カ所の自動車教習所が加盟しており、このうち46カ所で支援が適用される。
養護施設に入所する生徒の免許取得はこれまで、国の支給があっても平均約23万円を自己負担しなければならなかった。県は今年度に高校を卒業する生徒で、就職に自動車免許取得が必要な場合に限り、18万5千円を援助する事業を開始。さらに今回の支援制度を利用すれば、全額を補助金でまかなうことができる。
同課によると、県内の児童養護施設で生活する生徒の普通免許取得率は、18歳時点で36・4%と一般の2倍以上。多くの子供が18歳で施設を出なくてはならず、高校卒業後は約8割が進学ではなく就職を選択することが背景にある。同課は「自立してからの免許取得は難しい。就職を有利に進めるためにも、子供たちはアルバイトでお金をためて免許を取得しているのが現状」と説明する。
県が3月に行った意向調査によると、県内で今年度高校卒業見込みの生徒は98人。このうち71人が免許取得を希望しており、36人が県内の教習所に通いたいと回答したという。
同協会の宮浦博司専務理事は「昨年で協会創立50周年を迎えたことから、何らかの社会貢献ができないかと検討していた。免許があれば職業選択の幅も広がる。継続的な事業として続けていきたい」と力を込めた。
申請は児童養護施設や里親などから、県こども安全課を通して同協会に行う。問い合わせは同課(電)048・830・3331。