殺人罪の公訴時効が廃止された法改正(平成22年)がなければ、時効を迎えていた被告が初めて起訴された刑事裁判の上告審判決で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は3日、「時効撤廃は憲法で禁止された違法性の評価や責任の重さをさかのぼって変更するものではなく、合憲だ」とする初判断を示した。
その上で、強盗殺人罪に問われた久木野信寛被告(46)の上告を棄却。無期懲役とした1、2審判決が確定する。
久木野被告側は時効廃止について、「事件当時は時効が15年だったのに、改正で廃止された。(事後に定めた法律によってさかのぼって違法とする)遡及(そきゅう)処罰を禁止した憲法39条に違反する。時効成立を認めるべきだ」と主張。
しかし、同小法廷は「容疑者や被告になる可能性のある人物の、すでに生じていた法律上の地位を著しく不安定にする改正ではない」と退けた。
久木野被告は9年4月、かつて勤務していた三重県上野市(現伊賀市)のビジネスホテルで、フロント係の男性=当時(48)=を刺殺、売上金約160万円を奪ったとして、時効廃止後の25年2月、約16年の逃亡の末に逮捕された。1審津地裁の裁判員裁判は無期懲役を言い渡し、2審名古屋高裁も支持した。