熱血弁護士・堀内恭彦の一筆両断

「一票の格差」訴訟

 ■覚悟持ち役割果たせ

 去る11月25日、最高裁大法廷は、いわゆる「一票の格差」訴訟において、格差が最大2・13倍だった昨年12月の衆院選は「違憲状態」である、と判断した。ただし、今回も違憲無効・選挙やり直しの訴えは認めなかった。

 最高裁が衆院選を「違憲状態」としたのはこれで3回連続であり、「投票価値の平等は他に優先する唯一かつ絶対的な基準である」「国会は抜本的改革の先送りを繰り返している」との考え方が浸透しつつある。

 既に高裁レベルでは、一歩踏み込んだ「違憲」判決が出されており、最高裁も、これまで度重なる警告によって国会に自主的な格差是正を促してきた。いつ「違憲無効」「選挙やり直し」と判断されてもおかしくない状況であった。

 しかし、今回も最高裁は制度改正後1年5か月後の選挙だったこと、国会で見直しが続いていることなどを理由に、「選挙制度改正に必要な合理的期間を経過したとは言えない」として「違憲状態」との判断にとどめた。このような中途半端な状態がいつまで続くのであろうか?

 国会としては、自らの選挙の正当性が疑われ、政権の民主的基盤が揺らいでいるのであるから、身を切る覚悟で真っ先に一票の格差是正に取り組まなくてはならない。来年1月に提出される予定の選挙制度調査会の答申を踏まえて、速やかに改革案をまとめる必要がある。もはや、党利党略、私利私略による小手先の数合わせでは解決できない。本来的に国会の自浄能力が期待されているのである。

 そうは言っても、現実には、定数是正に利害関係のある国会議員自身に、抜本的な改革を期待することは難しい。長年にわたって「違憲状態」判決が繰り返されても、いまだに国会は格差を抜本的に解消しようとしていない。それどころか、「違憲状態」判決は司法による「お墨付き」程度に受け止められ、「どうせ違憲・無効判決までは出せないだろう」と甘く見られているのが現実である。

 しかし、最近の判決の流れを見ると、司法の我慢も限界に来ている感がある。国会の怠慢が続くようであれば、最高裁が伝家の宝刀を抜いて「選挙は違憲無効!やり直せ!」と宣言するかもしれない。「選挙」という国民の意思を正確に届けるシステムの障害を是正するためには、司法(最高裁)が一歩前に踏み出して積極的に違憲無効判決を出していこう、という考え方である。

 私は、「一票の格差」問題については国会の裁量権を最大限に尊重し、出来る限り違憲無効とすべきではないと考えている。だが、それも程度問題であり、国会に自浄能力がないということになれば、司法(最高裁)が覚悟を持って違憲無効判決を出さざるを得ない。最高裁の裁判官も生身の人間であり、自らの保身も考えれば、違憲無効判決を出すことには相当の勇気がいるだろう。しかし、司法がその役割を果たさなければ、いずれ、国民から非難の声を浴びることになる。

 「違憲状態」という曖昧な概念は、三権分立の観点から、立法府(国会)の選挙制度に関する裁量権を最大限に尊重したものと言えるが、他方で、司法(最高裁)の自己保身とも言える。

 三権分立はあくまでも国民の権利を守るためのシステムに過ぎないのであるから、「投票価値の平等」という国民の権利を守るためには、立法、司法に携わる者は、その役割を覚悟を持って果たさなければならない。

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【プロフィル】堀内恭彦

 ほりうち・やすひこ 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。日本の伝統と文化を守る「創の会」世話人。趣味はラグビー。