秘録金正日(53)

KGB元要員と裏取引 父・金日成に極秘ファイル「反政府組織名簿」突き付け軍最高司令官を手中に ソ連に籠絡された将校リスト

 振宇の死後、「白玉のように純潔な忠誠心」をたたえる「白玉」という映画がつくられた。映像では、正日が83年2月の誕生日に、振宇とそろいの白い服と靴で撮った写真が何度も登場する。正日がいう。

 「(日成)首領さまを奉じる戦士の忠誠心はみじんの汚れもない純潔なものでなければなりません。だから白を選んだのです」

 北朝鮮編纂(へんさん)の『金正日伝』に、正日と振宇の親しげな姿を見たアフリカの首脳が日成に2人の関係を尋ねる場面が描かれている。日成はこう答えたという。

 「党と軍の関係です」

 自分を支える両輪とでも言いたかったのだろうか。だが、その裏でこの時期、正日は軍での足掛かりを着々と築いていた。兄弟分ともいえる呉克烈(グクリョル)を総参謀長に就けたのをはじめ、金永南(ヨンナム)の弟で党軍事部長兼日成の軍事補佐官を務めた金斗南(ドゥナム)ら、自分に追従する勢力で軍の統制や作戦を担う中核ポストを固めていった。

 振宇に対しても、ベンツなど高級外車を贈ったり、豪邸を建てたりと、あの手この手で歓心を買おうとするが、容易になびくことはなかった。

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