その他の写真を見る (1/2枚)
金日成(キム・イルソン)は政権運営の大半を長男の金正日(ジョンイル)に丸投げしながら、朝鮮人民軍最高司令官の座だけは譲ろうとしなかった。
北朝鮮で、身長150センチ(現在は148センチ)以上で体に障害がない男子は平均10年以上の兵役が課される。軍歴がなければ、原則、朝鮮労働党員にもなれない。だが、正日の軍歴といえば、大学時代の40日間ほどの軍事訓練が全てだ。
日成は「党は正日に、軍は(次男の)平一(ピョンイル)に任せる」と公言。怒りに任せて次男を左遷した後も、軍については長男に委ねることなく、抗日パルチザン時代から自分に付き従ってきた呉振宇(オ・ジヌ)に任せてきた。
その日成が1991年12月、最高司令官を正日に譲ると発表する。何が心境に変化をもたらしたのか。
ベンツに豪邸…あの手この手
金正日より24歳年上の呉振宇は、朝鮮半島東北部、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の貧しい農家に生まれた。16歳で中国に渡って抗日パルチザンに加わり、金日成に出会って以降、死ぬまで日成に忠誠を尽くしたことを置いて、目立った英雄談もない。
この絶対忠誠こそが激しい権力闘争の中にあって、軍での不動の地位を維持し続けた秘訣(ひけつ)といわれる。