国連は2000年にテロリズムや国際的な犯罪を未然に防ぐことを目的とする「国際組織犯罪防止条約」を採択した。日本も署名したが、締結のために必要とされる共謀罪がないため、今も批准できていない。同条約は現在186の国・地域が締結しており、国連加盟国で入っていないのは日本、イラン、北朝鮮、ソロモン諸島、コンゴ共和国、ツバル、パプアニューギニア、パラオ、南スーダン、ソマリアの10カ国と極めて少数だ。
テロ組織を含む国際組織犯罪と戦うサークルに加われず、地球規模で拡散する国際テロ動向に関する情報も得にくい状態が続くことになる。パリ同時多発テロ事件後、自民党内からは共謀罪創設の法整備を求める声が上がるのは、このためだ。
谷垣禎一幹事長は11月17日の記者会見で、共謀罪を創設して国際社会と連携する必要があるとの認識を示し、「来年は日本でサミットを行う。情報がないと十分な対応はしにくい」と指摘。高村正彦副総裁も「法整備をしっかりやらなければならない」と同調し、党幹部の認識は一致している。
一方、野党からは自民党の動きに反発する声が相次いでいる。民主党の枝野幸男幹事長は「過去3度廃案になった共謀罪はとんでもない話で論外だ」と批判。共産党の小池晃政策委員長も「テロに便乗し、刑法の大原則を大きくゆがめ、内心の自由にまで踏み込むことが許されるのか」と語気を強めた。公明党ですら山口那津男代表が「懸念を示す声もあり、慎重な取り組みが必要だ」と述べている。