地域を守る熊本県警

山岳遭難事故に警鐘「入念な計画と準備怠りなく」

山岳救助隊員(右)らがチラシを配り、注意を呼びかけた=10月31日、熊本県南阿蘇村の道の駅「あそ望の郷くぎの」(県警提供)
山岳救助隊員(右)らがチラシを配り、注意を呼びかけた=10月31日、熊本県南阿蘇村の道の駅「あそ望の郷くぎの」(県警提供)

 健康志向の中高年層の「登山ブーム」に伴い、熊本県でも今年に入り、山岳遭難事故が増えている。対応を迫られた県警は万一、登山者が事故に遭ってもすぐにその場の位置情報を知らせることができるシステムを開発した。入山前に入念な登山計画を立てるよう、注意喚起も促している。

 県警によると、熊本には中高年の初心者でも無理なく登れ、手軽にハイキングを楽しめる山が多い。

 そんな山で先月、遭難事故が立て続けに起きた。

 10月25日、阿蘇山が広がる高森町の根子岳(ねこだけ)に登った福岡市の男性(67)が一時行方不明になり翌朝、中腹付近で見つかった。登山道から約40メートル滑落し、頭の骨を折る大けがをした。

 しかもその日は、県南の水上村(みずかみむら)の市房山(いちふさやま)でも鹿児島県の64~79歳の男女5人が下山途中で、日没のため道に迷い、2時間後に全員が救助される一幕もあった。

 県警地域課によると、根子岳で助かった男性は「道も崩落し、危険だった。以前登ったときは若く、体力もあったが、今回は過信した」と平謝りだった。

 市房山で救助された男女は「8合目から引き返したが、日暮れが早かった」とばつが悪そうにしていた。

 同課地域指導対策官の森田幸夫警視は「体力を過信し、装備も登山計画も不十分なまま山頂に向かい、しかも、途中で引き返す判断が遅れ、事故につながるケースが多い」と分析する。

 警察庁によると平成26年、全国では2293件の山岳事故が起き、2794人が遭難した。統計の残る昭和36年以降、最多だった。熊本ではすでに昨年(15件)を上回る17件が起き、35人が巻き込まれた。

 このまま手をこまねいているわけにはいかないと、県警は対応を急いだ。

 阿蘇山系では、県阿蘇地域振興局と連携し、たとえ不測の事態が起きてもスマートフォンのGPS(全地球測位システム)機能を使い、即座に県警に位置情報を知らせることができるシステムを開発した。

 遭難者が110番通報し、熊本県のホームページ(HP)上の「阿蘇山登山情報」から「遭難時現在地通報メール送信システム」に進むと、GPS機能でその場の位置情報が県警に伝わるという優れものだ。

 これまでは携帯電話の電波を受信した基地局周辺を捜す方法に限られていたが、山奥では実際の遭難現場から10キロ以上離れた基地局が電波を受信するケースもあった。それを改善し、誤差は数十メートルに縮まる。

 一方で、県警は山岳での捜索の手がかりになる「登山届」の提出をハイカーらに促すのにも力を入れる。

 氏名や住所、携帯番号や登山ルート、入山・下山予定時間を記入する。登山口に設けた記帳所のほか、最寄りの警察署にも出せるという。県警のHPからネット上での届け出もできる。

 裏面に登山届の用紙をそのまま載せた啓発用のチラシも作り、南阿蘇村などで配る「山岳遭難事故防止キャンペーン」も行った。

 森田氏は「今後はこれまで以上に寒くなる。体力を過信せず、無理のない登山計画を立ててほしい。実際に山に挑むときは事前に登山届の提出を忘れず、食料や防寒具などの準備も怠らないでほしい」と登山者としての「心得」を繰り返し、訴え続けている。

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