一方のアサヒは「サントリーの特許自体が無効だ」と反論した。「エキス割合やpHを調整して味を調整するのはビール業界では一般的な手法」とし、そもそも特許にあたらないとの主張だ。
これに対し、東京地裁の長谷川浩二裁判長は判決でサントリーの請求を棄却した。「サントリーの特許は既存製品から容易に発明できるもので進歩性がない」と断定し、アサヒの主張を認めた格好だ。
逆転のケースも
ただ、知財高裁ではアサヒの主張がそのまま認められるかは不透明だ。特許を認めるかどうかの判断材料になる「進歩性」の要件は、その時の裁判官によって判断が大きく分かれるためだ。
「進歩性」とは「先行技術に基づぎ、その技術分野の専門家が容易に成し遂げることができたとはいえないこと」。つまり、すでに公になった技術を使って容易に創作できる発明は「進歩性」がないとみなされ、特許権を得られない。
知的財産分野に詳しい上山浩弁護士によると「『進歩性』は容易に思いついたかどうかという判断。客観的な線引きがある訳ではない」と指摘する。
実際、これまで企業による訴訟では知財高裁へ持ち込まれ、地裁の結果が覆ったケースも少なくない。
グリーはディー・エヌ・エー(DeNA)に対し、自社製の釣りゲームに似たゲームの配信で著作権を侵害されたとして訴えた。一審の東京地裁は判決でDeNAに対し配信差し止めと損害賠償支払いを命じたが、DeNAが控訴した知財高裁の判決ではグリーは逆転敗訴となった。