亀岡典子の恋する伝芸

白塗りのルフィ客席の上を滑空-猿之助らが「ワンピース」で創る21世紀の歌舞伎 

 原作ファンが驚いたのが、坂東巳之助が演じたオカマのボン・クレーだった。人間の弱さとやさしさを弾けまくった演技で見せたのはさすが。ほかにも、かっこよさに徹した中村隼人のサンジ、ゴージャズでセクシーな市川春猿のナミや市川笑也のニコ・ロビンなど、全員がノリノリで、しかも大真面目に演じているのがいい。

現代語のせりふ、洋楽、スケール感…新しい思想・哲学も込めて

 スーパー歌舞伎IIは、猿之助の伯父、市川猿翁が創り上げたスーパー歌舞伎の精神を受け継ぎ、21世紀に新しい歌舞伎を作ろうとしている。スーパー歌舞伎は、現代語のせりふや洋楽、スケール感などエンターテインメントの楽しさとともに、それまでの歌舞伎にはあまり見られなかった哲学や思想が込められていた。

 しかし、昨年上演されたスーパー歌舞伎IIの第1弾「空ヲ刻ム者」は、スーパー歌舞伎の手法を受け継ぎながらも、若き仏師の苦悩と救いを描き、当代の猿之助らしさを打ち出した。そして今回の「ワンピース」はその上に、現代の最先端の技術とアナログの歌舞伎の手法を織り交ぜながら、猿之助ら若い世代の才能とアイデアで、さらに突き進んだ歌舞伎の世界を創造したといえる。

 「ワンピース」は来年3月、大阪松竹座でも上演される。もう一度、あのワクワクするような冒険の旅に連れていってほしい。