亀岡典子の恋する伝芸

白塗りのルフィ客席の上を滑空-猿之助らが「ワンピース」で創る21世紀の歌舞伎 

 だからこそ、歌舞伎の懐の深さと歌舞伎俳優の力量に改めて驚いたのである。

劇場全体がテーマパーク 全員ノリノリ、大まじめに演じる

 今回の「ワンピース」は、膨大な原作の中から「頂上戦争編」を舞台化している。海賊王になるため旅立ったルフィ(猿之助)と、その仲間の麦わらの一味。一幕目では、彼らの登場が、歌舞伎「白浪五人男」の勢揃いそのままに描かれる。

 やがて、裏切り者の海賊、黒ひげ・ティーチ(市川猿弥)の罠にはまり、処刑されることが決まった義兄弟のエース(福士誠治)を救うため、ルフィは脱獄不可能といわれる大監獄インペルダウンに向かう-。

 秘宝をめぐる冒険を骨子としながらも、仲間を救うため、命の危険を冒しても戦おうとするルフィや、次代に希望を託して死んでゆく伝説の白ひげ(市川右近)の姿は、人と人の絆や同志愛、友情の大切さを描いて胸を熱くさせる。

 そして、なにより、スケールとファンタジーに満ちた海賊たちの冒険譚の歌舞伎化に成功しているのは、劇場全体をテーマパークにしたような楽しさに満ちた演出だ。

 ルフィに扮した猿之助はサーフボードに乗って客席の上空を斜めに浮遊する。巨大なクジラが泳ぎ、ゆずの北川悠仁が作詞・作曲した主題歌「TETOTE」が流れると客席は総立ち。コンサートに行ったようなノリでもある。

 猿之助は、ルフィのピーターパンのような永遠の少年性を見事に表現、伸びる手もアナログの人海戦術で処理。猿之助はほかにも女ヶ島アマゾン・リリーの絶世の美女ハンコックと、赤髪のシャンクスの3役を演じた。