春画こぼれ話・その参(完)

江戸の女はかくも強かった…葛飾北斎が「萬福和合神」で描いた2女性の衝撃の性遍歴

現代語訳で読める『【浮世絵春画リ・クリエイト版】萬福和合神』
現代語訳で読める『【浮世絵春画リ・クリエイト版】萬福和合神』

永青文庫(東京都文京区)で開催中の「春画展」は、12月23日の会期終了までに、来場者20万人突破もうかがう勢いという。予想通り女性の姿も多く、SNS上には「楽しかった」「きれい」「大量に『その部分』を見ていると、なんとも思わなくなる」…などなど、概ね好意的な意見が並んでいる。

確かに春画に描かれた女性たちは、大概幸せそうな表情をしている。男女の和合はおめでたいと寿ぐ思想が、根底にあるからだろう。陰と陽、天と地があるように、この世には男と女がいて、交わることで生命が誕生し子孫が繁栄する。

さて和合といえば、葛飾北斎が画作ともに手掛けた『萬福和合神(まんぷくわごうじん)』という艶本がある。2人の女性の性遍歴を描いた異色の作品で、これがもう、和合を寿ぐレベルを通り越し、衝撃の内容で笑ってしまうほど。永青文庫の春画展にも展示されているが、じっくりストーリーを追いたい場合、東京・銀座の永井画廊で開かれている「銀座『春画』展」(12月23日まで)がおすすめだ。デジタル技術で北斎が描いた当時の色彩を再現したという「リ・クリエイト版」に、現代語訳が付いている。

主人公は、裕福な家に生まれた「おさね」と貧しい家の娘「おつび」。同い年の幼なじみである2人の、13歳から30歳までの波乱に満ちた半生が描かれてゆく。まず13歳のおさねは両親の交わりをのぞき見て性に目覚めるが、貧しいおつびは近所の男2人に強姦されるというショッキングな内容で始まる。けれども、おつびは奉公先などで経験を重ねた後、裕福で助平な男の妾として跡取りを出産。最後は後家として、若衆遊びにふける安泰の身に。一方、おさねは相性の良い男と駆け落ちしたばっかりに実家から勘当され、最後は路傍で色を売る「夜鷹」にまで身を持ち崩してしまう。

2人の明暗もさることながら、注目すべきはとにかく2人がお盛んであること。銀座春画展の監修者で、国際日本文化研究センター特任助教の石上阿希さんも「女性が強い。強すぎて、この作品では男性2人が腎虚(精気を失う症状)で死んでしまいますし、おさねの婿も体が持たなくなり里に帰ってしまいます。北斎だけでなく他の絵師の艶本でも、男性は『勘弁してくれ~』と弱っているのに女性が『まだまだ』とやる気満々だったり…。楽しいですよね(笑)」