総支局記者コラム

泳ぐ宝石のまばゆさ 200年以上改良重ねた三代銘魚「いづも(出雲)ナンキン」を全国に

「いづもナンキン」の魅力に取りつかれ、飼育に情熱を注ぐ安部弘子さん=松江市の大根島
「いづもナンキン」の魅力に取りつかれ、飼育に情熱を注ぐ安部弘子さん=松江市の大根島

 いくつも並んだ白く大きなたらいの中で、銀色のうろこがまばゆく映える金魚が優雅に泳ぐ。のぞき込む愛好家たちの目は、あこがれのひとを見つめるかのようだ。

 島根県天然記念物「いづもナンキン」の品評会のひとこま。県東部に3つある愛好団体が毎年秋に松江、出雲市で相次いで開催している恒例行事で、丹精して育てた金魚の出来栄えを競うとともに、その普及のため、春にうまれた「当歳魚」の販売も行う。

 いづもナンキンの歴史は奥が深い。茶人などとして知られる松江藩7代藩主、松平不(ふ)昧(まい)(治郷)がこの金魚を愛し、「部屋の天井にガラスを張って泳がせ、月光でながめた」などと伝わる。200年以上も改良を重ねて出雲特有の「銘魚」となった。

 口や頭は小さく、腹部は後ろに向かって卵形にふくらみ、尾びれは4つに分かれる。背びれがないのはランチュウと同じだが、こちらは頭部の「肉(にく)瘤(りゅう)」がない。体色は白勝ちを基本に、赤混じりの更(さら)紗(さ)や鹿の子模様も珍重され、「泳ぐ宝石」と呼ばれる。

 松江市を中心とする「いづもナンキン振興会」が主催した品評会の「当歳魚の部」で最優秀魚を獲得した安部弘子さん(61)は、会員約60人の中で唯一の女性。40年前、中海に浮かぶ大根島(同市)に石川県加賀市から嫁ぎ、近所の人が飼育していたいづもナンキンを見て、魅力のとりこになった。

 「口紅を塗ったように口先を赤くし、体のうろこはパールのように光り輝く。清(せい)楚(そ)でかわいい」

 水槽の大きさや深さ、餌の種類や与えるタイミングなど研究を重ねる。毎春、産卵後に行う稚魚の選別作業は、日の出前に起床し、拡大鏡を使って数千匹を詳細にチェックするという。

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