エジプトで10月末、ロシアのコガルイム航空の旅客機が墜落、乗員乗客224人全員が死亡した。機内に持ち込まれた爆発物が原因と分析されており、テロの可能性が高まっている。ロシアでは、航空機の災禍が毎年のように相次ぐ。専門機関の調査ではこの20年間で200件以上の重大事故が発生し、1400人以上が犠牲に。世界ワースト1との不名誉な称号も掲げられている。原因は、老朽化した航空機の整備不良や悪天候時の飛行に加え、パイロットの酒酔いなどの致命的ミスが挙げられ、最近でもポーランドのレフ・カチンスキ大統領(当時)、仏石油大手トタルのCEO、ロシアのプロアイスホッケーチームなどが巻き込まれ、非業の死を遂げている。惨劇には、ロシア航空業界を取り巻く構造的な問題が関連している。(佐々木正明)
着陸時安堵の拍手
ロシアでは、事故が多発しているにもかかわらず、国民は広大な国土を移動するためには航空機を使わざるを得ない宿命にある。例え、過去に問題を起こした航空会社でも、その路線が独占運航状態であれば、その航空会社のチケットを購入するしかない。
ロシアでは旅客機が空港に着陸すると、機内で乗客たちの拍手が沸き上がることがある。かつては、目的地へ着いた高揚感とパイロットに対する感謝の気持ちが入り交じった一種の感情表現といわれたが、最近では「大過なく無事に着いた」との安堵(あんど)から思わず手をたたいてしまう乗客もいるという。