世界保健機関(WHO)の専門組織が、ソーセージやハムなどの加工肉の摂取と大腸がんとの関連を公表したことが波紋を呼んでいる。主に海外で消費者の不安が拡大し、関係団体の反発も背景にWHOが火消しに走る事態となった。国内で消費への影響は出ていないが、専門家は「数字が独り歩きし過ぎている」と分析する。
WHOの専門組織、国際がん研究機関(IARC)が先月、公表した研究結果では、加工肉は発がん性につながる物質が加工段階で生成されると指摘。1日50グラム摂取すると、大腸がんのリスクが18%増加すると指摘した。発がん性の評価は5段階中、喫煙やアスベストと同じ最も高いレベル。赤身肉でも発がん性の恐れがあると結論付けた。
50グラムはソーセージなら2~3本、ハムでも3~4枚程度だ。これに対し各国の関係者が反発。海外メディアによると「データを歪曲(わいきょく)している」(北米食肉協会)、「怖がることはない」(ドイツ農相)、「笑いぐさ」(オーストラリア農相)など、主に加工肉の生産大国で批判が続出した。韓国では、スーパーでの加工肉売り上げが約2割も落ち込んだという。
このため、WHOは後日、改めて「加工肉を食べないよう要請するものではない」とする声明を出し、沈静化を図るという異例の展開をたどっている。