鑑賞眼

歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」 十一代目しのび、海老蔵流に磨きを

 昭和前・中期、海老さまと呼ばれ、絶大な人気を誇った十一代目市川團十郎五十年祭として、十一代目が得意とした演目を昼夜に並べ、豪華顔合わせで名優をしのぶ。孫に当たる当代市川海老蔵が祖父の当たり役に挑み、ひ孫となる海老蔵長男(堀越勸玄(かんげん))が2歳にして初お目見えした。

 海老蔵は、父の十二代目團十郎以上に祖父の面影が濃い。昼、大佛(おさらぎ)次郎が祖父に当て書きし、父、海老蔵と引き継がれた「若き日の信長」の信長で入魂の芝居を見せる。ウツケ、破天荒と巷説(こうせつ)される信長の実は繊細で孤独な姿。祖父の品格、父の度量、海老蔵の激情。まさに、似合いの家の芸だが、諌死(かんし)した守役・平手中務(市川左團次)の遺体を前に本心を吐露する叫びは圧巻も、歌舞伎により近づけてほしい。ラスト、信長を慕う娘・弥生(片岡孝太郎(たかたろう))の鼓で舞う「敦盛」も肚(はら)から謡いたい。夜は「河内山(こうちやま)」で初役の河内山宗俊。世話っぽくソフトな詐欺師風。こちらもはまり役で、海老蔵流を磨いていけば。

 昼は、市川染五郎の泰然自若な実盛で「実盛物語」。尾上(おのえ)菊五郎の五郎蔵(ごろぞう)、左團次の土右衛門で「御所(ごしょの)五郎蔵」が付く。夜。初めに坂田藤十郎、片岡仁左衛門らが花を添え、勸玄初お目見えを祝う「江戸花成田面影(えどのはななりたのおもかげ)」。「元禄忠臣蔵・仙石(せんごく)屋敷」で仁左衛門の大石内蔵助(くらのすけ)。中村梅玉(ばいぎょく)が仙石伯耆守(せんごくほうきのかみ)。「勧進帳」は、松本幸四郎の威風堂々たる弁慶。染五郎の富樫(とがし)。尾上松緑(しょうろく)の源義経。25日まで、東京・銀座の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)