声をかけてくれたクラスメートに恋した少年。恋い焦がれ、無視されたすえに出した「刺殺」という結論。東京都町田市の高1女子刺殺事件から10日で10年がたつ。少年は刺殺後、父の墓を見下ろす山に凶器を捨てた。うっそうとした山林は事件当時のままで、少年の父の墓もあのときと同様にひっそりとたたずむ。暴走した片思いの果てに犯行に及んだ少年の心境は、はたして変わったのだろうか。(加藤園子)
一声で「気になる存在」に
「試験頑張れ」
少年が高校受験を前にした平成17年1月。同じ中学校に通う同学年の女子生徒が声を掛けてくれた。女子生徒が少年に声を掛けるのはこれが初めてだった。
女子生徒は中学1年時に読者モデルを務め、クラスでも目立つ存在だった。周囲から孤立していた少年にとって、その日から女子生徒は急に「気になる存在」となった。
2人は同じ高校に進学した。しかしやがて女子生徒からメールの返事がなくなる。学校であっても知らんぷり。無視されている理由を尋ねようとして帰ってきた予想外の言葉にショックを受けた。
「うざい」
恋心は敵意に変わり、そして殺意となった。