中国は、台湾の選挙の行方がよほど気になるらしい。初の直接選挙となった1996年の総統選の前には、近海にミサイルを撃ち込んで、世界を驚かせた。
▼中国が独立派とみなす李登輝総統の実現を阻むために、有権者を恫喝(どうかつ)したものだ。結果は裏目に出て、李氏の圧勝に手を貸すことになる。その後も選挙のたびに、中国寄りの候補を後押しする、さまざまな工作を行ってきた。
▼中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統がシンガポールで7日、会談するという。来年1月に総統選を控える時期に、49年の分断以来という歴史的な会談を行う意味はどこにあるのだろう。
▼現在の選挙戦は、中国に距離を置く野党民進党の蔡英文候補が優位に進めている。対する与党国民党は、ごたごたが続いてきた。「中国との統一」発言を繰り返して、支持率低下を招いた前の候補に代わって、朱立倫党主席が担ぎ出されたばかりだ。有権者の間で中国への警戒感が強まるなか、首脳会談の開催が国民党に有利に働くとは、とても思えない。