しかし、オイルリグは移動できないうえ簡単な攻撃で破壊されてしまう脆弱性の高い構造物である。したがってオイルリグから自衛隊や米軍に対してミサイルを発射することは、直ちにオイルリグに対して反撃が加えられ破壊されることを意味している。
また、むき出しのオイルリグにミサイル発射装置を設置した場合、日本側はミサイルによる攻撃状況を常時監視することができるため、ミサイルの捕捉、追尾そして撃墜は容易だ。
このように考えると、人民解放軍にとって、オイルリグへの攻撃用兵器の設置はさしたるメリットがないことが分かる。そのような軍事資源は軍艦や航空機に回したほうが得策ということになる。
オイルリグが警戒監視塔となることも
しかし、攻撃兵器設置だけが軍事利用ではない。人民解放軍がオイルリグを「警戒監視塔」にすることが十二分に考えられる。
たとえばオイルリグに対空レーダーを設置すると、現状は中国大陸沿岸域にあるレーダー施設による東シナ海域の監視区域が350キロ以上も前進することになる。対空レーダーの探知距離は少なくとも200キロ程度であるため、東シナ海に中国が設定したADIZ(防空識別圏)全域を地上基地とオイルリグのレーダー装置によって監視できることになる。その結果、中国ADIZ内での自衛隊や米軍の航空機は常時人民解放軍の監視下に置かれることになるのだ。