正論

「台風を放棄する」と憲法に書けば台風が来なくなるのか? 危惧抱く教養主義の衰退 平川祐弘(東大名誉教授)

 またドイツ語でマルクスを読んで有難がる社会科学者よりも、東独からの逃亡者と生きたドイツ語で会話する竹山道雄の判断の方を信用した。私はいま竹山の往年の新聞コラムを本に編んでいるが、その安保騒動批判は今でも通用する。「米軍がいると戦争が近づく、いなければ遠のく-、多くの人がこう考えている。しかしあべこべに、米軍がいると戦争が遠のくが、いなければ近づく」と考えるのが竹山だった。

 習近平中国の露骨な膨張主義に直面して日本人の考えはいまや後者の方に傾いた。半世紀前は新保守主義とか教養主義とか揶揄された田中や竹山だが、どうしてその判断は捨てたものではない。

 そんな大正教養主義世代を敬重するだけに、日本の高等教育における教養主義の衰退に危惧の念を抱く。かくいう私はlater specializationを良しとした。ところが近年、文部科学省はそんな専門化への特化を先延ばしする教養主義を排し、早く結果の出る専門主義を推している。

会員限定記事会員サービス詳細