月刊正論

又吉直樹よ、知っているか? 太宰治が愛国者だったことを…  岩田温

【月刊正論】又吉直樹よ、知っているか? 太宰治が愛国者だったことを…  岩田温
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※この記事は月刊正論11月号から転載しました。ご購入はこちらへ。

 又吉直樹の『火花』がベストセラーになっているという。読んでみたが、特に面白くもなかったし、感銘も受けなかった。

 だが、何よりも興味深く感じたのは、又吉直樹が太宰治に多大なる影響を受けているという事実だった。

 又吉は自らの太宰経験を次のように綴っている。

《中学生の頃、太宰治の『人間失格』を読み衝撃を受けた。そこに書かれていた幼少期から少年期までの主人公大庭葉蔵の振る舞い方は自分自身が世界に向き合う時の方法そのものだったからである。

 なぜ誰も知らないはずの僕のやり方がここに書かれているのだろう? この人は一体なんなのだろう? そのような感覚が最初の印象であり、ということはだ、ここに書かれている凄惨な出来事が今後自分自身の人生にも起こるかもしれないという恐怖も感じた。『人間失格』を読んだ多くの人が、僕と同じようにこれは自分の物語だと感じるらしい。》(『確かにお前は大器晩成やけど』其の七「ほらっ、マニアックナイト」より)

 恐らく又吉の太宰経験は、多くの人々に共有されている太宰経験なのではないだろうか。太宰が描き出す自堕落な主人公に、自らのある部分を重ね、まるで自らが描かれているかのような錯覚に陥る。太宰は自身の弱みを次々と曝け出し、その弱さを小説家としての強みとする。

福田恆存が描く「太宰」像

 こうした太宰治論とは異なる視点から、太宰を論じたのが福田恆存だ。

 福田が描く明るい太宰治像は、我々が想像している太宰治像とは懸け離れている。

 福田によれば、太宰治は芥川龍之介の生涯を逆に生きてきた。芥川は「生」から「死」へと向かったが、太宰は「死」から「生」へと向かっているというのだ。

 福田はその転換時期についても綴っている。

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