マイナンバー汚職

見栄に汚れたカネをつぎ込んだアウトロー官僚 なぜ厚労省の自浄作用は働かなかったのか?

 「厚労省のなかでも一番の専門家。しっかりとした自分の考えを持っていて、明快に説明していくことからファンも多かった」。中安容疑者と一緒にパネリストをしたことがあるIT関係者はそう振り返る。

 今月13日、中安容疑者の特異な個性は、専門家の枠を超えて広く知られることになる。警視庁捜査2課が、厚労省が公募した企画競争で便宜を図った見返りに現金100万円をIT関連会社から受け取ったとして、収賄容疑で中安容疑者を逮捕したのだ。

 中安容疑者は「自分から現金を要求した」と容疑を認めているという。

■客員准教授、非常勤講師…高卒でも肩書ズラリ ワインレッドのシャツで出勤

 中安容疑者は昭和63年3月に高校卒業後、平成3年に国立病院職員として採用。17年に厚労省研究開発振興課医療機器・情報室に配属されて以降、一貫して医療の情報化に関わってきた。

 医療の情報化にからみ、産官学が参加するフォーラムのメンバーにも名を連ね、全国各地の講演会に呼ばれた。スライドでは東北大や北海道大の客員准教授、内閣情報セキュリティセンター、秋田大の非常勤講師などの肩書を列挙し、参加者に強烈なインパクトを残してきた。

 講演会でも異彩を放つ風貌が、厚労省内で噂にならないはずがない。

 ある厚労省職員は、中安容疑者がワインレッドのシャツに黒いネクタイを締め、くるぶしまで届くようなトレンチコートを着てきたことを鮮烈に覚えている。「金回りのいい人だな」と感じたという。

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