大江は交渉責任者の甘利の許可もなく、「これが大臣の認識です」と交渉相手に耳打ちし、出方を探ることはしばしば。大江は「今日は甘利さんを利用させてもらいました」と、あっけらかんと事後報告した。
フロマンは、鶴岡や大江らを同席させず、甘利との直接協議を要求するようになった。1対1なら落とせる-と踏んだのかもしれない。ただ甘利もフロマンとの距離を慎重に測っていた。
フロマン「韓国は米韓FTA(自由貿易協定)でこの条件で了解した」
甘利「米国が韓国をどう思っているのか知らないが、日本は米国の属国じゃない! 日米は対等だ」
自動車協議では、米側に優位な協定内容とされる米韓FTAを引き合いに、フロマンが日本の市場開放を強行に迫ってきたが、甘利は毅然と切り返した。
チーム甘利は米国と対等に渡り合いながら、徐々にだがTPP交渉を大筋合意へ導いていった。(敬称略)
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この連載は大谷次郎、坂本一之、沢田大典が担当しました。