国土交通省は23日、タクシーの初乗り距離を短くした上で運賃を低く抑える運賃体系を全国に普及・拡大させる方針を固めた。平成28年度中に実証実験を行う。中小事業者を中心にタクシー業界の経営環境が厳しさを増す中、手軽に利用できるようにすることで、高齢者や訪日外国人観光客向け需要などを掘り起こし、市場活性化を図る。
現行制度でも、事業者は初乗り距離を短縮して運賃を下げることが認められており、大阪市域では、通常2キロで680円の場合、936メートルで360円に設定されている。だが、事業者が個別に運賃設定ができないなどの制約に加え、減収につながるとの懸念から、普及が進まなかった。
一方で、初乗り運賃が下がれば、高齢者の買い物や通院といった日常利用や、鉄道や道に不案内な訪日外国人客の利用が見込まれ、新たな市場開拓につながるとの期待がある。
実証実験では、距離と料金の組み合わせを柔軟に設定することで、事業者の損益分岐点や多様化する利用者ニーズをあぶり出すことを主眼に置く。参加事業者の選定については今後、有識者会議で検討する。
タクシー業界はリーマン・ショック以降、需要が低迷。政府は特定地域に限って、一定期間の新規参入を禁止するなどの施策で経営下支えを図ってきた。
だが、国交省の調査によると、25年度のタクシー輸送人数は17年度比で2割以上も減り、右肩下がりが続いている。