王子ホールディングスは2013年3月、CNFを使った透明なシートを三菱化学と共同開発した。高温状態でも縮みにくく、薄くて折りたためるため、曲げられる次世代のディスプレーや太陽電池に使えるとして、16年以降に実用化する計画だ。さらに今年8月には、化粧品の原料を手がける日光ケミカルズと、CNFを使った新たな原料の開発で合意している。
製紙大手では、九大と研究を進めてきた中越パルプ工業も生産増強を計画しているほか、大王製紙も愛媛大と包装材料などへの応用を探っており、一気に普及しそうな気配だ。
もっとも、CNFは夢の素材といわれる分、技術的課題が少なくない。たとえば、樹脂とCNFをなじませることは、水と油を混ぜるようなもので、高度な技術が求められるという。また、現在の製造コストは1キロあたり数千~1万円と、炭素繊維の3000円程度より高い。
ただし、価格については量産効果で一気に下がる可能性がある。実際、20年ごろには1000円程度まで下がるとの予測があるほか、潜在的には500円以下に抑えられるともいわれる。