韓国の朴槿恵大統領に関するコラムをめぐり、名誉毀損(きそん)で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対する裁判で、韓国検察当局は「コラムは誹謗(ひぼう)目的で書かれた」などとして、懲役1年6月を求刑した。
産経新聞はこの問題で、一貫して起訴の撤回を求めてきた。
公人中の公人である大統領に対する論評が名誉毀損に当たるなら、そこに民主主義の根幹をなす報道、表現の自由があるとはいえない。報道に対して公権力の行使で対処する起訴そのものに、正当性はなかった。憲法で言論の自由を保障している民主国家のありようとは、遠くかけ離れている。
≪異様な状態に終止符を≫
日本新聞協会や国境なき記者団など内外の報道団体や国際機関からも、批判は相次いでいた。そうしたなかでついに論告求刑に至ったことは、極めて残念だ。重ねて11月26日の判決当日までに、起訴を撤回するよう求めたい。
とはいえ、韓国の検察側に起訴を撤回する考えは全くないようだ。
そうであるなら、ここは韓国司法の正念場である。大統領府や政権の意向におもねることなく、法治国家における司法の独立性や矜持(きょうじ)を世界に示す絶好の機会ととらえてほしい。
韓国という国家は、自由と民主主義、法の支配といった価値観を共有するグループに属する。そう胸を張ることができる判断を、司法当局が毅然(きぜん)として下す。判決公判が、そのような場になることを期待する。