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TPP「対米協調」に落とし穴あり オバマ政権の対中姿勢は軟化の流れ

 11月に開かれるIMF理事会では、来秋から元をSDR構成通貨に加えることを承認する情勢だ。SDR通貨になれば、人民元は各国中央銀行間で現在のSDR構成通貨であるドル、ユーロ、円、ポンドとの交換が保証される正真正銘の国際通貨となる。元は国際決済で日本の円を圧倒し、日本の銀行も企業もドルと同じく、人民元がなくてはビジネスが成り立たなくなる日が近づく。

 北京は「国際通貨元」を実現し、低コストのドル資金調達能力に不安があるアジアインフラ投資銀行(AIIB)など中国主導の国際金融機関での人民元資金活用の道を開く。人民元による基軸通貨ドルへの挑戦ともなるが、金融市場自由化と門戸開放および変動相場制移行のプログラムを習近平政権が受け入れると、米国はドル基軸のグローバル金融体制に中国を取り込みやすくなり、ニューヨークとロンドンを拠点とする国際金融資本は巨大な収益機会を獲得できる。実利面で米中妥協の余地が大きいのだ。

 米国の金融市場を支えてきたのが日本である。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は安倍首相に消費税増税を実行させてマイナス成長に舞い戻らせた。異次元緩和で余ったマネーによって日本からの対米投資は増え続けている。「対米協調」は日本の基本路線には違いない。しかし、自国益に執着しないアベノミクスは日本を再生させられないだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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